4月 2008
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例えば、だ
「例えば、だ」
そう言って、父さんは、自分の容器からそうめんを一本、つまみあげた。
10センチ程のそうめんは、つゆをぽたぽたと容器に落しながら、丁度父さんの目の高さまで持ち上げられ。為す術も無く重力方向に垂れ下がっている。
父さんがそうめんを挟んだ指に少しだけ力を加える。すると、扇風機の風に揺れていたそうめんが、ゆがく前に戻ったように堅くなったのがわかった。父さんが指の角度を変えると、そうめんはぴんと細長い身体を伸ばしたまま、重力に逆らって、上を向く。
「軟かったそうめんも、こうなる」
そう言うと父さんは、固くなったそうめんをつかんだ指を離した。何の気なしに折り取った草を、やはり何の気なしに飽きて捨てるかのような気軽さで。
父さんの指から離れたそうめんは、僕には認識できないような速度で、僕の喉に突き刺さった。
「は」
叫ぼうとして、声がでない。代わりに血を吐いた。
...