たんけんぼくの死街(まち)は、19XX年4月1日から20XX年3月32日までNHK不教育テレビで放送されていた不教育番組。人生3年生対象の社会科番組。全3756回。
謎の放射線により日本各地にゾンビが溢れかえった近未来。舞台となった街で主人公の「腸さん」が迫り来るゾンビと死闘を繰り広げながら、かつての文明の痕跡を辿り、手書きの地図にまとめるというのが毎回の主な展開だった。
また見所として、腸さんとかつて親しかった人々のゾンビとの死闘が挙げられる。押し寄せる無数のゾンビの中に見慣れた顔を見つけた腸さんは、自らの手で彼らに引導を渡しつつ、彼らとの思い出の場所を地図に書き残すのが毎回おなじみの展開だった。書き上げた地図に涙のにじみが残されていることも珍しくなかった。更に毎年3月に放送される最終回では、決まって下宿のおじさんおばさんがゾンビと化すのがお約束であった。動かなくなったおじさんおばさんのゾンビに合掌し、書き上げた最後の地図を片手に愛車の腸さん号(武装自転車)で去ってゆく腸さんの姿は、当時の視聴者に強烈な印象を与えたと言われる。
暗い部屋。広さは10平方メートル程度。四方の壁はむき出しのコンクリートで、窓は無く、驚いた事に扉らしきものもない。その中に、十数人の人が横たわっている。
突如、明かりがついた。
明かりにより、眠っていた人々が起き出す。そして、それぞれ、辺りを見回し、自分たちの置かれた状況の不可解さに、戸惑い始める。
どこからか、スピーカーを通した雑音交じりの声が聞こえる。
「おはよう。諸君。君達は、突然こんな所に集められて戸惑っていることだろう。君達の心に不安を感じさせるような事を、君達の物語の外で行ってしまう事に私の心も痛んでいる。すまない。かわいい娘達よ。私の最後の務めとして、君達の質問に時間の許す限り答えよう。それが救いであるとはとても思わないが、君達が君達の運命に対する態度を決める時間は、きっと意味があると信じている」
人々―皆、若い女性であり、ウェディングドレスを着たもの、高校の制服らしきものを着たもの、エプロンをつけたもの、リクルートスーツ、水着、あるいは何も着けていない様々な彼女たち―は、それぞれが、抗議の声を上げた。
最後にスピーカーの声は言った。
「君達は歪んでいるのだ。責任は私にある。壊れた映写機から正しい映像が得られなくても、悪いのは映写機であり、映し出された映像に罪は無い。お別れだ」